校長室だより第3号

梅雨・・・隠岐高校発の出会い
校長 山田和彦

 


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   梅雨本番です。私の心は夏模様ならぬ梅雨模様ですが、体育の授業を受ける生徒の元気な声が聞こえています。今日から期末試験です。

 先日のことでしたが、「体育の授業はどうか」と生徒に問うと「球技大会を目指して、楽しいです。」と返ってきました。一学期の期末試験を迎えて"暑いです"という返事を何となく期待していた私は苦笑いでした。やはり高校生は元気ですね。

 さて先日、村上郁朗先生(現 花巻東高校教頭)が県内の高校の進路講演会講師としてご来県中との情報を得ましたので、早速図々しく出向き、再会を喜びました。

 先生は岩手県陸前高田市にお住まいで、この3月まで岩手県立大船渡高校の教頭としてご勤務だったのです。進学指導では全国に名がとどろく有名な先生です。全国のいろいろなところで講演もされています。昨年度は私の前任校である隠岐高校にも講演に来ていただきました。

 先の大震災で被災され、ご家族は幸いにもご無事でしたが、「思い出も懐かしい風景もすべて失われた」と人伝に聞いていました。隠岐高校の藤原隆先生が、震災後に村上先生を避難先の小泉公民館に訪ね、次のように私に伝えてくれていました。「先生は避難所のお年寄りの精神的なサポート、避難所運営の助言などで避難所でも欠かせない方になっておられます。献身的に関わっておられる姿には、ただただ頭のさがる思いがします。」

 今回は講演の合間の30分間程度しか話ができませんでしたが、逆に私が励ましてもらいました。学研・進学情報7月号に掲載された先生の記事を抜粋して紹介させてください。

 『・・・毛布も非常食もない。停電だから真っ暗。・・・みんなで肩を寄せ合って体を震わせた一夜です。・・・夜中にある家電量販店の店員さんが店にあった石油ストーブと懐中電灯と山ほどの電池を持ってきてくれたんです。・・・さっそく電灯を付けると一気に安堵感が広がりました。自然と拍手が起こった。あの灯りで心が落ち着けた。・・・外部との連絡が取れないなかで店の商品を差し出すと決断した現場責任者は、人間としてとても立派な人だと思う。このような非常時に冷静に状況判断し、果敢に行動できる人間の育成こそ教育の原点だと確信しました。・・・避難所に一人で避難してきた80歳をすぎる女性がいるんです。震災前から一人では歩けないほど足腰が弱っていて、家の中でも一人でいるときが多かったようです。家族とは震災でバラバラになって、中には津波にのみこまれてしまった人もいたということでした。・・・「私が助かって若い人がたくさん死んでしまって申し訳ない」と何度も言う。そのたびに「俺たちは生かされたんだ、生き延びたということには何か意味があるんだ、一日でも長く生きよう」と繰り返しました。周りの人も積極的に声をかけました。するとね、不思議なことが起こったんです。一人でトイレに行けるようになって、今では食事の前後にテーブルを拭いて回る役を自らやるようになったんです。他人から承認されると人は変わる。人間は字の通り人と人の間に存在する。その間を生み出すものが絆。地獄のなかでも人は絆を生み出す。今回私はその瞬間をはっきり見ました。』

 個人としての謙虚さと職業人としての強い意志・・・。梅雨模様に浸るなんて、私はまだまだ甘い。


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